坂本社労士のブログ

無断欠勤による解雇は有効、社員寮のカギ交換は不法行為   ( 2012.04.22 )

日立製作所事件
東京地裁判決平成23年11月24日
無断欠勤を理由とする解雇を有効としたが、社員寮のカギの交換は不法行為であ
るとした事案。
〈事案の概要〉
本件は、従業員が体調不良を理由として所定の手続をとらずに平成21年3月末ごろ中
国に帰国し平成22年3月31日までの間欠勤していた。そこで会社は平成21年12月
29日付懲戒解雇通知を送付し、通知は平成22年1月4日に従業員の兄宅に到達したが、
受け取りを拒否された。
会社は従業員を解雇し、社宅の部屋のカギを取り替えた。
従業員が会社にたいして解雇の無効を主張し、未払い給与の支払を請求し、同時に鍵の
無断交換が不法行為に当るとして損害賠償請求をした事件である。なお、原告である従業
員には代理人はついていない。
〈判旨〉
「本件欠勤は所定の手続を経ない無断欠勤である」とし、私傷病欠勤であるとしても賃金
規則により「私傷病欠勤注の賃金も支給されないことが認められる」とした。懲戒処分に
ついては「譴責、出勤停止1日、同5日の各懲戒処分が本件住所に配達されている」し、「本
件解雇通知書も」配達されたが受取拒否されていることが認められるので、懲戒解雇は有
効とした。
一方で、鍵の無断交換については、部屋が社員寮の中で構造上独立したものとなってお
り、原告の荷物も部屋の中にあることから、占有が継続していると認定し、違法な自力救
済に当たると認定して損害賠償請求(6万8400円)を認めた。
〈解説〉
本件は本人訴訟と思われる。資料からは原告代理人の記載がない。法律相談に行ったが
解雇は争えないという回答を得たか、あるいはネット上に公開されている訴状などを利用
して裁判を起こした可能性もある。弁護士に費用を払うのが無駄と考えて自分で裁判を行
うこともあり、専門家の判断と無関係に訴訟になった可能性がある。
さて、本件では解雇に至る会社の対応には問題はないと判断されたといってよい。所定
の手続をとらずに帰国してしまった従業員に対して、譴責、出勤停止1日、同5日と徐々
知って得する知識と知恵シリーズ12.4 月号
に処分を重くしており、日時を指定した出勤命令を送付したが従業員は出勤しなかった。
子の経過から懲戒解雇通知を会社は従業員に送付していると考えられる。
従業員側はおそらく送付される通知は解雇通知と考えたため、受取を拒否したのだと思
われる。
しかし、郵送による通知は相手の支配圏内に届けば到達したものと扱われるし、一度住
所まで届けられたものを拒否したからといって受け取らなかったものとはならない。
ここまでの会社の対応は適切であったといえる。
問題は社員寮のカギの交換である。社員寮であって社員であることが寮利用の要件であ
っても、一旦占有が成立している以上は法的な手続きによる明渡を求めなければならない。
占有権限がなくなったことを理由に明渡訴訟を提起し、判決が確定した後に強制執行をす
る必要がある。
本件ではこの点で会社のわきが甘かったというべき事案だと思う。
従業員が体調が悪いと言って中国に帰ってしまったのだから、もう日本には来ないだろ
うと判断したものと思うが、国民性の問題か(経験では日本人ではあまりこういった訴訟
にはならない)訴訟になってしまったというべきであろう。
会社から相談を受けた場合は法的手続きをしっかりと踏むようにアドバイスをするしか
ないが、会社がどう判断するかは強制できないので、専門家として問題が生じない方向を
示して相談終了となるかもしれない。
なお、強制執行をした場合は、部屋の中にあったものの保管費用は退去する側が負担す
るので、そうした場合は従業員は多額の保管料を支払う必要があったと考えられるので、
会社の判断により従業員が助かったともいえる。このような費用を払うのが困難な場合が
多いので通常は強制執行前に自主的に退去するか、残置物の所有権放棄し廃棄してよいと
いう同意書を作成することが多い。

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