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退職後、秘密保持義務違反・競業避止義務違反とならなかった事例 ( 2012.09.02 )
〈事案の概要〉
原告となった会社の元従業員3 名が退職後に被告関東工業で原告と同種の営業を行った。
そのときに、原告在職中に知り得た仕入れ先に関する情報を持ちだして利用したとして、原告が被告を提訴した。これに対して、被告は就業規則や競業をしない誓約書でいう業務上の秘密に該当しないとして争った。
〈判旨〉
「何をもって業務上の秘密とするかについて、就業規則に具体的に定めた規定は見当たらない」
「就業規則や個別合意により保護されるべき秘密情報については、かならずしも不正競争防止法の営業秘密と同義に解する必要はないが、労働者の正当な行為までが不当に制約されないために、少なくとも、秘密管理性と非公知性の要件は必要であると解するのが相当」として、原告の請求を棄却した。
〈解説〉
従業員が退職して、同業他社に勤務するようなことは比較的多い。特に今までのキャリアを生かそうとすると必然的に同業種に就業する確率が高くなる。
そこで、従業員に対して就業規則や誓約書で社内で勤務中に得た秘密については漏らさないこと、それを利用しないことなどを定めることが多い。
本件では、その「秘密」とはなにかが問題となった。
裁判所は秘密管理性と非公知性が必要であると判断した。
前者はまず、秘密であるとして会社がその情報を管理していたか、の問題である。本件では仕入れ先に関する情報については特に社外秘などの指定がされていなかったようである。また、後者についても従業員であるだけで知ることはできないものが必要であると考えられるが、本件では仕入れ先情報は誰でも閲覧できる状態であった。そのため、本件では営業上の秘密ではないとの判断がされたようである。
社外に知られては困る情報については、社外秘であることをきちんと指定しておくこと、その情報を閲覧できる者をたとえば一定の部署や一定の役職者以上であると指定しておくこと、が必要であるだろう
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