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公民権の行使に伴う就業が有給となった事件 ( 2012.03.10 )
〈事件名〉社会福祉法人乙会事件
東京地裁平成23年7月15日判決
公民権の行使に伴う不就労が有給として扱われ、賃金カットをした会社の措置
が違法とされた事案
〈事案の概要〉
原告が東京都労働委員会へ証人として出頭したさいの不就労を理由として、賃金カット、
調整手当の相殺、賞与のカットを行った。
これに対して原告はカット・減額された賃金の支払を請求する訴えを提起したところ、
被告は原告に対して払いすぎた賃金があると主張して過払金支払請求の反訴を提起した。
〈判旨〉
「本件各不就労時間は労基法7条にいう「公の職務を執行するために必要な時間」に該
当するものと解されるところ、同条は、労働者がその労働時間注に公民権の行使等のため
に必要な時間を請求した場合、使用者はこれを拒んではならないことを規定するにとどま
り、公民権の行使に要した時間に対応する賃金についてはこれを有給とすることを要求す
るものではなく、これを当事者間の取り決めにゆだねる趣旨の規定であると解するのが相
当」としたうえで、本件については就業規則に「不可抗力の事故のため、または公民権行
使のため遅刻または早退した時は、届出により遅刻、早退の取り扱いをしない」と定めら
れているところ、裁判所はこれを有給とするとの趣旨と解釈した。
裁判所は労働契約法6条をみると、ノーワークノーペイの原則があるところ、ことさら
就業規則にこのような規定を設けている以上は、例外的に賃金を支払うという趣旨と解釈
し、労働時間に公民権の行使に要した時間が含まれるとしたものである、と判断している。
〈解説〉
就業規則にこの規定と同様の規定を定めることは多いと思われる。社会保険労務士が業
務で就業規則を起案する際も、このような規定を入れることがむしろ多いのではないかと
思う。
労基法7条の規定があるので従業員が就業しなくてよい、という趣旨で定めているもの
で、給与の支払があるか否かはそれぞれの会社によって異なっていると思われる。
さて、本件では給与のカットが可能か否かが正面から争われた。このような事案では会
社と当該従業員の関係がうまくいっていないことが多いように感じている。
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